116 衣冠畜生、彼女への長年の企み(5更)

賀川礼は鐘見寧を一瞥し、彼女が無事なのを確認してようやく安心した。

「賀川さん、助けてください!」鐘見肇は彼を見るや親戚でも見たかのように叫んだ。「この老女が人を殺そうとしています。早く警察を呼んでください」

高橋院長はその時になってようやく我に返った。

先ほどの出来事は、わずか数十秒の間に起きたことだった。

彼女は完全に茫然としており、一時の感情の高ぶりで手にしたものを振り回してしまい、まさか本当に鐘見肇を傷つけることになるとは思っていなかった。

賀川礼は今日、黒い服を着て、玄関に立ち、逆光に佇んでいた。

顔の輪郭は影に隠れ、ただその目だけが鷹よりも鋭く、狼のように恐ろしく、彼女は恐怖で胸が高鳴った。

終わりだ。

今度こそ本当に終わりだ。

彼女は人を傷つけてしまった。

鐘見肇は絶対に彼女を許さないだろう。今になって後悔しても、なぜさっき500万円を渡すことに同意しなかったのか。今渡そうとしても、きっと同意してくれないだろう。

人は一度悪事を働くと、最初に思い浮かぶのは:

逃げること!

彼女は震える指で陶器の破片を落とし、這いずり立ち上がって逃げようとした。

賀川礼は視界の端に置かれた下駄箱を見つけ、足を上げて蹴り飛ばした!

高橋院長は避けられず、直撃を受けた!

膝を打たれ、息が詰まるほどの痛みを感じ、「ドン!」という音とともに、そのまま地面に倒れ込んだ。手で地面を支えようとしたが、年齢のせいで反応が遅く。

顔面を地面に強く打ちつけた。

「押さえつけろ」賀川礼が命じると、木村海はすぐに前に出て、膝で彼女の背中を押さえ、両手を後ろに捻じ上げた。

「離して、離してください!」高橋院長はまったく抵抗できなかった。

彼女はその時になってようやく気づいた:

鐘見寧について来たという「運転手」が、賀川礼の命令に従うということを。

高橋院長は鈴木最上しか会ったことがなく、前回病院に行った時も木村海はいなかった。

彼女はようやく気づいた、この男は……

賀川礼の部下だったのだと!

もしかして、最初から鐘見肇との共謀ではなく、

賀川礼との共謀だったのか!

喧嘩も口論も全て演技だったの?

真相を悟り、彼女は鐘見寧の方を振り向いた。