賀川礼は鐘見寧を一瞥し、彼女が無事なのを確認してようやく安心した。
「賀川さん、助けてください!」鐘見肇は彼を見るや親戚でも見たかのように叫んだ。「この老女が人を殺そうとしています。早く警察を呼んでください」
高橋院長はその時になってようやく我に返った。
先ほどの出来事は、わずか数十秒の間に起きたことだった。
彼女は完全に茫然としており、一時の感情の高ぶりで手にしたものを振り回してしまい、まさか本当に鐘見肇を傷つけることになるとは思っていなかった。
賀川礼は今日、黒い服を着て、玄関に立ち、逆光に佇んでいた。
顔の輪郭は影に隠れ、ただその目だけが鷹よりも鋭く、狼のように恐ろしく、彼女は恐怖で胸が高鳴った。
終わりだ。
今度こそ本当に終わりだ。
彼女は人を傷つけてしまった。