117 自分を大切に、残りは因果に任せて

「家族?」

鐘见寧は言葉を聞いて数秒間呆然とし、そして微笑んで「麺が冷めちゃうわ」と言った。

「でも...」鈴木最上が口を開こうとしたが、賀川礼の視線で制止され、空気を読んで立ち去った。しばらくして、鐘见寧は箸を置いて言った。「高橋院長は私に、両親を亡くし、親戚もいない孤児だと言っていました」

「だから、これまで家族を探そうとも思いませんでした」

「言うことがコロコロ変わる人なんて、信用できるわけがない」

彼女は自嘲的に笑った。

人を見る目がなく、こんなに長い間騙されていた自分を笑った。

「家族?結局は私を利用して、自分や子供たちの窮地を脱出させたいだけよ」高橋院長の魂胆は全て分かっていた。

「なぜ高橋院長を疑うようになったのか、話してくれませんか?」

鐘见寧は高橋院長が寄付金を流用したり、私利私欲のために自分を利用したりするとは信じたくなかった。