138 欲しいと言ったら、くれるの?

賀川礼は出張中、タバコの欲求に負け、どうしても我慢できずに一本吸っていた。彼は少し俯き、何を考えているのか分からない様子で、指先のタバコは冷たい風の中で、火花が明滅していた。

鐘见寧の記憶の中で、彼はほとんどタバコを吸わなかった。

眉を下げ、唇の端にタバコを咥えた姿は……

言い表せない魅力があった。

彼が目を上げ、視線が合った瞬間、指先で揉み消し、火花が散った。

手を振って、周りのタバコの匂いを払い除けた。

従姉からのメッセージでは、少なくとも10分以上後に降りてくるとのことだった。タバコの欲求に負け、一本吸ったところで、鐘见寧が近づいてきた時、賀川礼は眉をしかめ、「タバコの匂いがする」と言った。

「気にしないわ」

鐘见寧は禁煙が簡単ではないことを知っていた。

「寒いから、上着を持ってきたよ」

一枚のトレンチコート。

賀川礼が以前彼女に着せたものだった。サイズが大きく、彼女の体にかかると、なんとも不釣り合いな感じがした。

「入り口のコンビニで酸乳を買いたいの」と鐘见寧は言った。家に在庫がなくなっていた。

「前にたくさん買ったはずだけど」

「野が最近よく来るから」

言外の意味は、賀川野に全部飲まれてしまったということだ。

賀川礼が家にいない時は、彼はいつも遠慮なく、食べ物や飲み物を勝手に食べ、時には持ち帰ることもあった。

二人が並んで団地の外に向かって歩いていく様子を見て、上階の江口晗奈は舌打ちした:

このぎこちない奴、手をつなげよ!

夫婦の親密な場面が見られると思っていたのに、こんなに穏やかすぎる。

全然面白くない。

あんなに距離を置いて、恋愛してるの?それとも仕事の話?

——

24時間営業のコンビニ内

この二人が現れた時、夜勤の店員の注目を集めた。あまりにも優れた容姿だったからだ。女性は男性用のトレンチコートを羽織り、冷蔵ケースの前で商品を選び、男性は買い物かごを持って横で待っていた。

とても調和のとれた、お似合いのカップルだった。

すでに夜11時過ぎで、店内にはほとんど人がいなかった。

「イチゴ味と黄桃味、どっちが好き?」鐘见寧は味を選んでいた。

「どちらでも」

賀川礼は酸乳が好きではなかった。「好きなら、たくさん買っていいよ」

「賞味期限があるから、あまり買い溜めできないの」