137 寧ちゃんが連れ去られる、彼女を悪くしないで(2話)

賀川礼の人を刺すような視線に、江口晗奈は全く動じなかった。

結局のところ、幼い頃から賀川礼は彼女のことを姉さんと呼んでいたし、賀川野のような臆病者とは違って、実の兄を見ただけで足がすくむようなことはなかった。

彼女は鐘见寧を見つめながら続けた。「どうせ近所だし、行き来も便利だし、それに……」

「うちには猫もいるのよ」

「本当に私の家に来たくないの?」

猫?

賀川野から得た情報によると、鐘见寧は小動物が好きだという。

鐘见寧は少し心が揺らいだが、賀川礼を横目で見た。彼は今日出張から帰ってきたばかりで、一人で家に置いていくのは少し悪い気がした。

「従姉に誘われたんだから、行けばいい」賀川礼は率直に言った。

以前は鐘見家の者に制限されて、友達がいなかった。

確かに友達を作る必要がある。

でも自分の従姉は……

食事が終わる時、賀川礼は江口晗奈に近寄って一言、「姉さん、彼女は純粋だから、悪い方向に導かないでくれ」

江口晗奈は笑いそうになった。

自分が何かワルい人間みたいじゃないか?まさか自分の嫁を何か悪い道に引きずり込むとでも?

彼女が純粋?

つまり、彼の心の中では、この従姉は純粋じゃないってことか。

岸許家には運転手がいるので、わざわざ江口蕴を送る必要はなかったが、江口晗奈は母親に念を押した。「もし彼が家で暴れ出したら、私に言って」

ここでの彼とは、もちろん岸許豊令のことだ。

「分かったわ、あなたたちも早く帰りなさい」

江口蕴を見送った後、江口晗奈は直接鐘见寧を自分の車に乗せた。そのため、鈴木最上が賀川礼に会った時、彼は一人きりだった。彼は眉をひそめて、「ご主人様、奥様はどちらに?」

「さらわれた」

「……」

きっと岸許家のあの従姉妹だろうと思いながら、鈴木最上は自分の上司の機嫌が悪そうなのを見て、それ以上何も言わなかった。

結局、岸許家のあの方は手ごわい相手だからな。

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この時、鐘见寧はすでに江口晗奈の車に乗っていた。途中で仕事の電話がかかってきて、もともとそれほど親しくないこともあり、鐘见寧はコミュニケーションが得意ではないため、携帯を見ながら気まずさを紛らわすしかなかった。

「今日は本当に申し訳なかったわ。私の父があなたを困らせてしまって」江口晗奈が率先して口を開いた。