140 彼は衣冠禽獣そのものだ

一言で、昨夜の記憶が呼び起こされ、様々な感情が押し寄せてきた。

この時、

賀川礼の彼女の心の中のイメージは完全に覆された。

でもそれはまだ大したことではない、

結局、彼が夢中になった時に意図的に言った言葉こそ、本当に聞くに堪えないものだった。

彼女を赤面させ、崩壊させなければ気が済まなかった。

本当に耐えられない。

鐘见寧がもがきながら床に降りると、賀川礼は彼女が転ばないように、細くて柔らかい腰を掴んだ。洗面所の鏡に映る彼女の肌は、皮を剥いたライチのように白かった……

彼が近づいて頬にキスをすると、また薄紅色に染まってしまった。

「やめて、歯を磨かないと」

歯も磨いていないのに、キスなんてできない。

「自分のことをしていいよ」

賀川礼はドア枠に寄りかかって彼女を見つめ、だらしない表情を浮かべていた。

まるで……

満腹の狼のように。

今、笑いながら彼女を見つめ、どこから食べ始めようかと考えているかのようだった。

視線が偶然に絡み合い、簡単に引き込まれてしまった。

次の瞬間にも火花が散りそうだった。

「足が痛い」鐘见寧が先制攻撃をした。

「天気予報では午後か夜に雨が降るそうだ」

鐘见寧は頷いたが、足の痛みは天気だけが原因ではなく、昨夜の彼の激しさと無関係ではなかった。どうやら時間を見つけて立花さんが紹介した病院でマッサージを受けに行かなければならないようだ。

髪を結んで洗顔しようとした時、首筋に赤い痕が残っているのに気付いた。

胸元にも……

足にまで痕が残っていた。この状態で、どうやってマッサージを受けろというの!

彼女は振り向いて彼を見つめ、目に怒りの色が浮かんでいた。

ある人は怠惰な表情で言った、「やっぱり女の子は、肌が柔らかいね。僕は力を入れてないのに」

「……」

この口調は、まるで彼女を責めているかのようだった。

なるほど、

この旦那様は昨夜まだ満足していなかったというわけか。

鐘见寧が少し憤慨していると、賀川礼は話題を変えた。「何が食べたい?」

「なんでもいいよ」

「じゃあ肉にしよう。体力をつけないと。君、疲れているように見えるよ」

今まで誰にも疲れていると言われたことはなかった。普段ダンスをするのにもたくさんの体力が必要で、怪我をした足以外は体は健康そのものだった。