皆がリビングに向かい、江口蕴は特に果物を洗って切り、大婆様の大好きなお茶菓子も買っていたが、テーブルに並べたとたん、結城梦乃の思う壺に嵌ってしまった。
彼女がお腹が空いたと言ったからだ。
「すみません、今とても食べたくて。お構いなく食べてもいいですか?」結城梦乃は江口蕴を見て笑った。
その言葉には挑発的な意味が込められていた。
江口蕴は黙っていた。大婆様が特別に招待した客なのだから、歯を食いしばって我慢するしかなかった。
すると彼女はオレンジを少し食べただけで、妊娠つわりのような演技を始めた。
「美味しくない?」岸許豊令が気遣わしげに聞いた。
「ちょっと酸っぱいわ」
「じゃあ、リンゴはどう?」
「そうね」
「私が剥いてあげる」
他の人々は「……」
江口晗奈は目を天に向けて白目を剥いた。