155 夫の代わりに側室を迎える?愛人を正妻にするなんて夢のまた夢

和楽園にて

佐藤ママは休暇が終わり、定時に買い物に来て昼食の準備をしていると、賀川野も家にいて、奥様が香札を作っている傍らで、生き生きとゴシップを話していた。

「……ネット民すごいよね、たった一時間で、あの妖狐の素性を暴いちゃった」

「彼女ね、以前は帝都の有名なマッサージ店でマッサージ師をしてたんだって」

「地元で結婚して、子供二人いたらしいけど、前の夫と離婚して、子供も捨てて、今は岸許クソおっさんに養われてるんだって」

賀川野は今日授業がなく、ゴシップを聞くために寝坊もしなかった。

家に帰ってきてから、父親にゴシップを聞いた。

岸許豊令の件について、賀川博堂は多少聞いていたが、まさかここまでひどいとは思わなかった。

「岸許クソおっさん?」鐘见寧は手を止めた。

「僕が付けたあだ名だよ」

鐘见寧は小さく笑って、「昨夜のあの状況で、殴られないか心配じゃなかったの?」

「二堂兄がいたから、誰も僕を殴れないでしょ?」賀川野は軽く鼻を鳴らして、「それに、姉さんを一人で戦わせるわけにはいかないし、やるべき時はやらないと。我慢してたんだよ。僕に言わせれば、二人とごちゃごちゃ話す必要なんてない……」

「ドアを開けて入って、まず殴ればいい」

「どうせ警察には通報できないんだから、殴っても無駄打ちにはならない」

鐘见寧は口角を上げ、香り土を続けて扱った。

香りが醒めた後、装飾模様が刻まれた型に香り土を入れ、必要な形に圧縮し、陰干しして、形を整え、貯蔵し、装飾を加えれば、香札の制作は完成する。

賀川野は傍らで半日見ていて、すべて繊細な作業だと感心し、頬杖をついて言った。「お嫂さん、本当に美人で器用だね」

「お世辞でしょ」

「本気だよ。ねえ、器用さって遺伝するのかな?父さんは不器用だから、僕も不器用なんだけど、お嫂さんの親戚には必ず……」

賀川野は率直な性格だが、言葉が口まで来て飲み込んだ。

「そうだ、もうすぐ国慶節だけど、お嫂さん予定ある?」

鐘见寧は首を振った。

「兄さんに連れて行ってもらえばいいじゃん。できれば僕も一緒に連れて行ってくれたら最高。プランニングとガイド役はお任せあれ」

佐藤ママがフルーツを持って入ってきて、「野様、そんなこと言わないでください。前に海外旅行で迷子になったじゃないですか?」