170 大喧嘩で流産（2話目）

賀川礼はまだ車を運転して向かっている途中だった。

「縛られて、交番の前に放置されたって？」鈴木最上はこのニュースを聞いて数秒間呆然とした。「旦那、誰がやったんですか？」

「私が知っていたら、お前に聞くか？」

「この人は結城梦乃の一挙手一投足を密かに見張っていたということですね。そうでなければ、こんなに素早く正確な行動は取れないはずです」

賀川礼は冷たい目つきで言った。「心配なのは、彼女を見張っていたのではなく……」

岸許家を見張っていたということだ。

あるいは、祖母や叔母、さらには従姉妹が標的かもしれない。

鈴木最上は彼の懸念を理解した。「しかし今のところ、相手に悪意はないようですね。そうでなければ、この機会に誘拐を確定させたり、事態を悪化させたりして、従姉妹さんはまた頭を悩ませることになったでしょう」

親子関係は、法律上、本当の意味での断絶はないのだ。

「木村海に頼んで、最近、従姉妹の周りに怪しい人物が現れていないか注意してもらってくれ」

鈴木最上は頷いた。

木村海の仕事は、やはり信頼できる。

——

その時、交番では

真相を知った岸許豊令は、感情が抑えきれなくなっていた。

「よくもやってくれたな……」怒りが込み上げてきた。「お前が自作自演だったとは、私は心を開いて全てを与えたのに、お前はこんな仕打ちをするのか？」

「全ての財産をお前にやったのに、お前は私を騙していたのか？」

岸許豊令の貯金は、ほとんど全て彼女に渡していた。

そうでなければ、江口晗奈に頼ることもなかった。

結城梦乃は状況を見て、もう演技をやめた。「あなたが私に優しくしたのは？それは私が妊娠したからでしょう」

「あなたが目当てにしていたのはこの子供よ」

「最初はあなたについていけば、順調に子供を産んで、お金持ちの奥様になれると思ったわ！」

「家と車を買ってくれると約束したのに、今じゃ家はあなたの母親に取り上げられちゃった！」

「岸許豊令、あなたはもう50歳過ぎなのに、まだ老婆に振り回されてる。私があなたに何を期待できるっていうの」

「あなたのお母様の言う通りよ、あなたは……」

「本当に役立たずね！」