交番内
江口晗奈と一緒にいたのは、もちろん岸許豊令だった。彼は結城梦乃を見るなり、急いで駆け寄った。「梦乃ちゃん、大丈夫?怪我はない?どこか痛くない?」
「大丈夫です」
結城梦乃は顔面蒼白で、恐怖のあまり全身が震えていた。
「お腹は?」
「何ともありません」
子供が無事だと聞いて、岸許豊令はようやく安堵の息をついた。
彼は自分も故意の暴行の容疑者であることを完全に忘れたかのように、近くにいた二人の誘拐犯に向かって駆け寄り、蹴りを入れようとした。
「この野郎ども、誘拐に恐喝か、ぶっ殺してやる」
「絶対に許さないぞ、最高の弁護士を雇って、死ぬまで訴えてやる!」
「岸許さん、落ち着いてください」警察官が制止した。
「どうして落ち着けるんだ。この畜生どもが私の妻を誘拐して、もし彼女とお腹の子供に何かあったら、命で償わせる」