波乱と変化を多く見てきた岸許大婆様は、車が賀川家旧邸に向かっていることに気づいた時、何かを察知した。
杖を強く握り締め、枝のように痩せこけた指は、力を入れすぎて血の気が失せていた。
車が停まると、賀川博堂がすでに出迎えに来ていた。
娘が亡くなってから、ここには来ていなかった。賀川家旧邸は大きく変わっていたが、昔の面影も残っていた。彼女は体を震わせながら、賀川博堂が急ぎ足で近づいてくるのを見つめた……
ぼんやりと、二十数年前のことを思い出した。
娘が亡くなった日、
賀川博堂も同じように表情を引き締めて、門前で跪いて待っていた。
「お母さん」江口蕴が心配そうに声をかけた。
「大丈夫よ」
岸許大婆様は深く息を吸い、賀川博堂について主厅に入った。
全員が揃うと、江口晗奈が口を開いた。「実は事の真相はまだ確かめられていませんが、全ての長老に伝えるべきだと思いました。この件は私一人では対処できないかもしれないからです」