霧色の空に、細い月が白い鉤のように浮かんでいた。
星はまばらで、すっきりとしていた。深夜の山風が骨まで染みるほど冷たく、賀川礼は鈴木最上に電話をかけ、木村海と一緒に岸許豊令の面倒を見るように頼んだ。彼はおそらく叔父に怯えて正気を失っていた。
結局、失禁までしてしまい、自分は精神的に不安定だから精神病院で療養したいと懇願していた。
鈴木最上が到着した時、二台の車が衝突して車体が凹んでいるのを見て、背筋が寒くなった。
賀川礼は従姉にもう一度電話をかけた。
「おばあちゃんの様子は?」
一番心を痛めているのは、彼女だった。
「あまり良くないわ」
「家に着いた?」
「いいえ、お寺に行くって言い張って」
この時、彼女たちはすでに寺に着いていた。夜になって山門は閉まっていたが、老婦人が日頃から寄進をしていたおかげで、中に入れてもらえた。彼女は座布団の上に跪き、仏様に拝礼し、額が地面に触れた瞬間、江口晗奈は祖母の肩が震えているのを見た……
きっと泣いているのだろう。
江口蕴は娘に外に出るよう合図を送り、祖母に一人の時間を与えた。
老婦人は気性が強く、もし妹を死に追いやったのが他人だったなら、命を賭けてでもその人に報いを受けさせただろう。しかし、それが自分の息子だった。
彼女は岸許豊令に完全に失望したが、それでも自分が産み育てた子供だった。
その苦痛と無力感は、おそらく母親にしか分からないものだろう。
——
賀川礼が従姉との電話を終えると、振り向いた先に叔父が立っているのが見えた。
指先の赤い光が、夜を焦がしていた。
「いつ北京に戻ってきたの?」賀川礼は彼の側に歩み寄った。
「午後だ」
「なぜ家に帰らなかったの?」
「義姉さんに会いに行ってた」
彼は午後ずっと霊園にいた。そう言いながら、賀川礼にタバコを差し出した。最近、気持ちが乱れていて、禁煙中なのに我慢できず、胸が詰まるような思いだった。
「おめでとう」
賀川礼は一瞬固まった。
「結婚おめでとう」
「ありがとう」
「時が経つのは早いものだな。この何年か、みんなが見合い相手を紹介してくれたのに、お前は誰一人見向きもしなかった。一生独身かと思ってたよ。好きな人が見つかって、叔父として本当に嬉しい」
「……」
「お前は変わった性格だから、前は本当に心配してたんだ」