霧色の空に、細い月が白い鉤のように浮かんでいた。
星はまばらで、すっきりとしていた。深夜の山風が骨まで染みるほど冷たく、賀川礼は鈴木最上に電話をかけ、木村海と一緒に岸許豊令の面倒を見るように頼んだ。彼はおそらく叔父に怯えて正気を失っていた。
結局、失禁までしてしまい、自分は精神的に不安定だから精神病院で療養したいと懇願していた。
鈴木最上が到着した時、二台の車が衝突して車体が凹んでいるのを見て、背筋が寒くなった。
賀川礼は従姉にもう一度電話をかけた。
「おばあちゃんの様子は?」
一番心を痛めているのは、彼女だった。
「あまり良くないわ」
「家に着いた?」
「いいえ、お寺に行くって言い張って」
この時、彼女たちはすでに寺に着いていた。夜になって山門は閉まっていたが、老婦人が日頃から寄進をしていたおかげで、中に入れてもらえた。彼女は座布団の上に跪き、仏様に拝礼し、額が地面に触れた瞬間、江口晗奈は祖母の肩が震えているのを見た……