194 盛山若社長:気品高き風格(2)

図面を描いていた男は、頭を上げることもなく。

「下階でお客様同士が揉めています」

「全員追い出せ」

「でも、一人は事を荒立てたくないと」

「なら、荒らす方だけ追い出せばいい。そんなことまで教えないといけないのか?」

「ですが、今は二人が手を出し始めました」

男は筆を止めた。「誰が殴られた?」

「荒らしている方です」

男は黙ったまま、再び図面に目を落とした。スタッフは焦っていた。対応をお願いしたかったが、折よく今日は盛山若社長がいた。

孔田家ならまだしも、賀川家まで巻き込むとは。「盛山若社長、もしよろしければ...見に行っていただけませんか?」

「私は警察じゃない。室内には監視カメラがある。警察に通報しろ」

「お客様の一人が賀川さんの恋人なんです」

「賀川礼?」

スタッフが頷いた。