江口晗奈は鐘见寧が孔田美渺に出会ったと聞いて、一瞬頭が痛くなった。
「彼女は大丈夫だったの?」彼女は急いでスタッフに尋ねた。
「大丈夫です。むしろ孔田お嬢さんを殴ったくらいです」
「自業自得ね」
話しながら、江口晗奈は4階の方向を見続けていた。スタッフは小さく笑って言った。「江口お嬢さん、ご心配なさらなくても大丈夫です。盛山若社長は近寄りがたい印象がありますが、実は良い方なんです」
「そう……」
江口晗奈は苦笑いを浮かべた。
そんなこと言われても、誰が信じるというの?
この時、鐘见寧も不安な気持ちでいっぱいだった。盛山若社長についてオフィスに入ると、一面の本棚と原石のジュエリー、シンプルで上品な雰囲気が広がっていた。
特に気になったのは、来客用の長机の上にあるガラスの香立てに、燃え尽きた線香があったことだ。