鐘见寧はテーブルの上の料理を見て、「美味しそうですね。三品と汁物、バランスの良い献立で、見ているだけでお腹が空いてきました」と言った。
「では、召し上がってください」
江口晗奈は話しながら、周りを見回し、樱庭司真の痕跡が全くないことを確認してから、やっと安堵の息をついた。「ゆっくり食べてください。私は先に部屋で着替えてきます」
外出時はスーツを着用する習慣があり、家に帰ると窮屈に感じてしまう。
ドアを開けると、まだ寝室のドアを閉める前に、樱庭司真がドアの後ろに立っているのが見えた……
彼女は息を呑んだ。
瞳孔が開き、目が合い、無言の交流。
彼女は樱庭司真がもう帰ったと思っていた。
「なぜまだいるの?」江口晗奈は声を極限まで抑えた。
「間に合わなかった」
彼も人間で、神様ではない。物を簡単に片付けて、出ようとしたが、時間が足りなかった。