196 男を隠して、致命的な魅力(2話目)

鐘见寧はテーブルの上の料理を見て、「美味しそうですね。三品と汁物、バランスの良い献立で、見ているだけでお腹が空いてきました」と言った。

「では、召し上がってください」

江口晗奈は話しながら、周りを見回し、樱庭司真の痕跡が全くないことを確認してから、やっと安堵の息をついた。「ゆっくり食べてください。私は先に部屋で着替えてきます」

外出時はスーツを着用する習慣があり、家に帰ると窮屈に感じてしまう。

ドアを開けると、まだ寝室のドアを閉める前に、樱庭司真がドアの後ろに立っているのが見えた……

彼女は息を呑んだ。

瞳孔が開き、目が合い、無言の交流。

彼女は樱庭司真がもう帰ったと思っていた。

「なぜまだいるの?」江口晗奈は声を極限まで抑えた。

「間に合わなかった」

彼も人間で、神様ではない。物を簡単に片付けて、出ようとしたが、時間が足りなかった。

重要なのは、鐘见寧が彼を知っていることだ。もし出くわしたら、今は言い訳で誤魔化せても、後々疑われる可能性がある。

江口晗奈は眉をひそめた。そのとき、鐘见寧は彼女に食事を促していた。この季節は料理が冷めやすい。彼女は樱庭司真を深く見つめ、上着を置き、ドアを閉め、ダイニングに向かった。

「そういえば、この盛山若社長のデザイン料って、一回どのくらいなんですか?」鐘见寧は好奇心を持って尋ねた。

「私の場合は8桁だったわ」

「そんなに高いんですか?」

「それどころじゃないわ。私は1年半契約したの」

「……」

「だから今日、無料でデザインしてもらえたあなたは得したわね」江口晗奈は笑って言った。

二人が食事をしていると、鐘见寧は後から気づいた。「姉さん」

「うん?」

「どうして家政婦さんは、私が来ることを前もって知っていたの?なぜ二人分の料理を作っていたの?」

江口晗奈は食事中で、これを聞いて、むせそうになった。落ち着いたふりをしてスープを一口飲んで、「母が時々来るから。それに一人分だと作りにくいでしょう」

鐘见寧は頷いた。確かにそうだ。

一人分の食事量を把握するのは、確かに難しい。

それに、誰でも毎日同じ量を食べるとは限らない。

鐘见寧は食が細く、江口晗奈は落ち着かない様子で食べていた。樱庭司真が見つかることを恐れていたその時……