197 老夫婦のような雰囲気、義理の弟は人を刺したそう

「カチッ」と金属の留め具が開く音が響いた。

江口晗奈は神経が張り詰め、全ての思考が手のひらに集中していた。ファンタが猫ベッドから顔を出し、怠惰な猫の目で二人を見つめていた。

二人の体は近くに寄り添い、まるで絡み合うように密着していた。

ファンタは立ち上がり、二人の間を行ったり来たりしながら、注目を集めようとしていた。

樱庭司真は彼女にキスをした。

彼の呼吸は荒く、次第に激しくなっていった。

彼女の首筋に寄り添い、熱い息が時に軽く、時に重く、彼女の頬と耳に吹きかかった。

彼の息遣いで、江口晗奈は全身が熱くなり、頭がぼんやりしてきた。

まるで温かい温泉に浸かっているかのように、力が抜け、熱さで体が動かなくなった。

どれくらい時間が経ったのだろう——

樱庭司真は彼女の耳元で「僕の名前を呼んでくれないか?」と囁いた。