「カチッ」と金属の留め具が開く音が響いた。
江口晗奈は神経が張り詰め、全ての思考が手のひらに集中していた。ファンタが猫ベッドから顔を出し、怠惰な猫の目で二人を見つめていた。
二人の体は近くに寄り添い、まるで絡み合うように密着していた。
ファンタは立ち上がり、二人の間を行ったり来たりしながら、注目を集めようとしていた。
樱庭司真は彼女にキスをした。
彼の呼吸は荒く、次第に激しくなっていった。
彼女の首筋に寄り添い、熱い息が時に軽く、時に重く、彼女の頬と耳に吹きかかった。
彼の息遣いで、江口晗奈は全身が熱くなり、頭がぼんやりしてきた。
まるで温かい温泉に浸かっているかのように、力が抜け、熱さで体が動かなくなった。
どれくらい時間が経ったのだろう——
樱庭司真は彼女の耳元で「僕の名前を呼んでくれないか?」と囁いた。