鐘见寧が山下助手と個室に入った時、ドアが開いていたため、盛山若社長が窓際に座っているのが一目で分かった。秋風が彼の髪を乱していた。
華やかな人物なのに、この時ばかりは孤独と寂しさに満ちていた。
ドアの開く音を聞くまで、その感情を隠し、鐘见寧を見て「久しぶりですね」と言った。
「こんにちは」鐘见寧は丁寧に頷いた。「直接お越しいただけるとは思いませんでした」
「ちょうど近くで用事があったので」
傍らの山下助手は、鐘见寧にお茶を注いだ後、静かに横に立ち、黙っていた。
用事?
彼の用事というのは、おそらくぼんやりすることだろう。
彼らがこの茶室で半日以上過ごしていたことなど、誰が知ろうか。
しかし、彼の盛山若社長の心中は、読み難い。
時には昼夜を問わずデザイン案を描き、また一日中じっと座って世事を気にしないこともある。