211 髪の毛でDNA鑑定(2更)

「先生?」看護師は眉をひそめた。どうしたのだろう?

「申し訳ありません」盛山若社長が証明書を拾おうと身を屈めた時、視界の端に人影が近づいてくるのを見かけ、顔を上げると賀川礼が来ていた。

彼は身を屈めて、鐘见寧の証明書をすべて拾い上げ、ついでにその赤い紐も拾った。

目の前の男を見て、「盛山若社長?」

彼は顔色が悪く、全体的に状態が極めて悪そうだった。

「すみません、腱鞘炎が出てしまって、一瞬バッグを持ちこたえられなかったんです」盛山若社長は無理に口角から微笑みを絞り出したが、視線は依然として賀川礼の手にある赤い紐に釘付けだった。

賀川礼は頷き、理解を示した。

鐘见寧は以前、リハビリ病院で盛山若社長と偶然出会ったことを彼に話していた。

彼の手には、確かに古い持病があった。

賀川礼は証明書を看護師に渡し、彼を観察して言った。「お顔色があまりよくないようですが」

この盛山若社長は叔父が対抗相手として見なすほどの人物だけあって、並の人間ではなかった。接する機会は多くなかったが、いつも優雅で、冷静さは時に冷淡とも思えるほどだった。

しかし今、その手が震えていた。

「大丈夫です!」

彼は自分を落ち着かせようと必死で、賀川礼の手にある赤い紐に目を向け、さも何気なく尋ねた。「その赤い紐は誰のものですか?」

「これですか?」

賀川礼は肩をすくめた。「もちろん寧ちゃんのですよ」

「彼女の?」

「これは少し複雑な話なんですが...」賀川礼は盛山若社長が敵対者ではないことを知っており、また孤児院の院長の件も特に秘密ではなかったので、簡単に説明した。「高橋院長が逮捕された後、その義理の娘が来て、赤い紐を持ってきました。寧ちゃんが当時手首につけていたものだと言って」

「その人は嘘つきなので、その話が本当かどうかはわかりません」

それでも鐘见寧はその赤い紐を保管していた。

「見せていただけますか?デザインが特別そうで」盛山若社長は顔を蒼白にして言った。

「もちろんです」

賀川礼は赤い紐を彼に渡し、鐘见寧の入院手続きを続けた。彼の頭も今は混乱していた。

医師から説明された手術のリスクのことばかりが頭にあった。

リスク同意書にサインをした時、心臓が締め付けられるような思いだった。