賀川礼を狙ったの?
そう考えると、確かに筋が通る。
今回のイベントは盛山誠章夫婦が主催したものだから。
賀川礼の奥様が事件に巻き込まれ、賀川家が責任を追及すれば、警備体制の不備を責められるだろう。
そうなれば、盛山漱花が最大の受益者となる。
盛山家の暗闘が、ついに表立った争いに発展したのか?
盛山心結はその言葉を聞いて慌てた。「叔父さん、私は賀川家を狙ったわけじゃありません」
「じゃあ私を狙ったということか。これは私と叔母さんが京都に戻ってから初めてのイベントだぞ。こんなことになって、お前は嬉しいのか?」
「違います、そんなつもりじゃ...」
盛山心結はただ胸に怒りを溜め込んでいた。鐘见寧が大勢に囲まれているのが気に入らず、彼女を困らせたかっただけだった。
叔父さんを狙うなんて、とてもできない。
「叔父さん、説明させてください。本当にイベントを台無しにするつもりはありませんでした」
盛山誠章は冷ややかに鼻を鳴らした。「じゃあ賀川さんを狙ったということだな」
「私は...」
ここまで来ると、誰の目にも明らかだった。
鐘見肇を連れてきたのは盛山心結だ。
それなのに彼女は傍観者のように様子を見ていた。
明らかに鐘见寧を狙ったものだった。
二人には争いもなく、昨夜まで和やかに話していたのに、一体どこで賀川さんが盛山心結の逆鱗に触れたというのか。
盛山心結は自分の思惑を見透かされ、周囲の嘲笑の声を聞いて、目に涙を浮かべながら、叔母さんに助けを求めようと視線を向けた。
叔母さんは優しい性格だから。
しかし湯川千秋は直接鐘见寧の側に行き、優しく尋ねた。「大丈夫?」
鐘见寧は首を振った。
「申し訳ありません。驚かせてしまって。警備の不手際で、ろくでもない者を入れてしまいました」
「大丈夫です」
盛山心結は悔しさで足を踏み鳴らした。今日のことは、どう説明しても無駄だった。
叔父さん一家は明らかに彼女を信じていない。
彼女はただ鐘见寧の失態を見たかっただけなのに。
なぜ最後には自分が笑い者になってしまったのか。
そしてその時、母が急いで近づいてくるのが見えた。慌てて駆け寄る。
涙を目に溜めて、とても悔しそうに。
「お母さん—」
盛山漱花は兄夫婦の表情を見て、おおよその状況を察した。
この馬鹿者!