書斎にて
賀川大爺様が先に入り、箱を引っ掻き回して、奥底から鞭、戒尺、木の棒を取り出し、不肖の息子に目に物を見せてやろうと待ち構えていた。
父親としての威厳を取り戻すために。
そしてこの時、書斎から数メートルも離れていない廊下で、菅野望月は二人の握り合う手に視線を落とし、心臓が激しく鼓動していた。
なぜこんなことになってしまったのだろう?
ぼんやりと。
「これから中に入るけど、僕に合わせてくれればいい。怖がらなくていいよ、父は優しいから」
「……」
菅野望月は苦笑いを浮かべた。
優しい?
都内全域で知らない者はいない、賀川様が若い頃から気が短いことを。まるで自分を三歳児だと思って騙そうとしている。
「賀川先生、私そんなに馬鹿に見えますか?」菅野望月は軽く鼻を鳴らした。