331 賀川さん驚き、子犬の尾が天まで上がる

個室にて

盛山文音は湯川俊夫の隣に寄り添い、鳥を撮影する時の面白い話を聞きながら、彼の家でシロハヤブサを見に行く約束をしていた。

「シロハヤブサを見に来る時は、賀川家のあの小僧も連れてきなさい」と湯川俊夫は咳払いをした。

「誰のことですか?」

文音は一瞬戸惑った。

「君の義理の弟だよ」

「……」

「この前、シロハヤブサを見たいとしつこく言ってきて、雀みたいにうるさくてね。連絡先を交換してからは、毎日三食挨拶してくるんだ」

文音は小さく笑った。「もしお邪魔だと思われるなら、後で彼に言っておきます」

湯川俊夫は咳をして、「まあ...そこまで邪魔じゃないがね」

「それに、あの小僧は体力があるから、鳥撮影に付き合ってくれて、機材も運んでくれる」

この話を聞いて、文音は笑いを必死に堪えた。

この前、賀川野が叔父さんと鳥撮影に行った時、鳥を2時間待って、撮影は2秒だけで、重い機材を運んで腕が上がらなくなったと言っていた。

帰宅後、自分に愚痴をこぼして、人生の苦瓜だと言っていた。

「俊夫さんは今は国内に住んでいるんですか?」町田克純が突然口を開いた。

「まあね」湯川俊夫はお茶を一口飲んで、「君が盛世を辞めて自分の会社を立ち上げたと聞いたよ。何か手伝えることがあったら、遠慮なく言ってくれ」

「ありがとうございます」

文音はビジネスのことがよく分からず、賀川礼に近づいて小声で尋ねた。「彼、会社を立ち上げたの?」

「ああ」

「どんな会社?」

「宝飾デザインだよ。彼はこの業界に長くいて、人脈もある」

文音は眉をひそめた。いわゆる人脈というのは、きっと盛世で築いたものだろう。これは明らかに盛世の顧客を奪うということではないか?

しかし、彼は文音の命の恩人で、つまり盛山家全体の恩人だ。たとえ顧客を奪おうとしても、見て見ぬふりをするしかない。それに盛山漱花が退職した後、会社は大きな動揺があり、確かに他のことまで気にする余裕はなかった。

「寧ちゃん、これを君に」町田克純は箱を取り出して彼女に渡した。

「ありがとうございます」文音は受け取った。箱には【玉翠堂】という文字が印刷されていて、彼が立ち上げた会社名のようだった。

「開けて見てごらん」