335 クズ女は責任を取らない

岸許家旧邸

秋月策人は犬のように江口晗奈の側にへばりついて「姉さん、あの株式譲渡契約書、サインしましたか?」

「あなたに関係ある?」

「富貴を得たら、忘れないでくださいよ!弟のことも引き立ててくださいね」

江口晗奈は仕方なく「堂々たる秋月家が、私の引き立てなど必要ないでしょう」

「この世で、金儲け以上に人を喜ばせるものがありますか?人は裏切るかもしれませんが、お金は裏切りません」

この言葉に、近くにいた賀川礼と樱庭司真が揃って"優しい"眼差しを向けた。

秋月策人はすぐに話を変えて「でも例外もありますよ。一途な人もたくさんいます。賀川さんと義兄さんみたいに...義兄さんは若いけど、人思いですからね」

江口晗奈は笑い出した。

彼は義兄さんと呼ぶのが随分お気に入りのようだ。

その時、彼女の携帯が振動した。親友からだった。