岸許豊令は歯ぎしりするほど憎しみを感じていた。
意識が清明な時、彼は絶え間なく恨みを抱き、その肉を喰らい、その血を飲みたいほどだった。もしこのような不肖の子を生まなければ、こんな目に遭うことはなかったのに。
「樱庭家の結納品に王羲之の【平安の文】があったそうですね。あれは以前、三億円以上の値がついたものです」
「樱庭家がこれほど気前がいいなら、お嬢様も嫁いでから幸せに暮らせるでしょう」
「会社の方は賀川さんが管理を手伝ってくれているので、安心でしょうね」
……
岸許豊令は殺意を覚えるほど怒り狂った。
どうして自分の会社を他人に任せられるというのか!
これは本来、すべて自分のものだったのに。
もしかして最初から、賀川家が彼をここに閉じ込めたのは、財産を奪う算段だったのか?