「おじいちゃん?」
賀川洵は頭痛に眉間を揉みながら考えた。家族や親戚の中で、礼と同世代の者たちは結婚して子供を持つ者も少なくなく、正月などの時期に「おじいちゃん」と呼ばれることはあったが……
江口晗奈の進展は早いものだ。
「菅野お嬢さんとの進展はどうですか?」礼が何気なく尋ねた。
「後輩が目上の私事を詮索するのか?」
「結婚式の席次で、もう一席用意するべきか考えていたんです」
「……」
「今の様子を見るに、必要なさそうですね」
賀川洵は平然とした顔をしていた。
あの日、旧邸から彼女を送り届けて以来、菅野望月には会っていない。
焦る必要はない。賀川家旧邸の室内デザインの仕事がもうすぐ始まるし、彼女と会う機会はまだまだある。
礼がこんなに詮索好きなわけではない。全ては祖父から与えられた任務だった。