第337章 重点警護対象、背後に黒幕あり

江口晗奈は言葉を聞いて、息を呑んだ。「いつのことだ?」

「今夜だ」

賀川礼は深刻な口調で言った。「本来なら休息時間だったが、医療スタッフが回診した際、ベッドに横たわっていたのは彼ではなかった。清掃員を殴って服を奪い、退勤時間に人混みに紛れて逃げ出したようだ」

「なぜ気付かなかったんだ?」江口晗奈は歯を食いしばって言った。

「ちょうど交代時間で、警戒が緩んでいた。油断していたんだ」

「じゃあ、彼はどこに?」

「捜索中だ」

精神病院は住宅地から離れており、その区間は監視カメラが完全には設置されていない。寒い時期で、外出する人々は皆厚着をしているため、監視カメラでの追跡は容易ではなかった。

「凌介にボディーガードを何人か手配させた。彼が見つかるまでは、できるだけ外出は控えてくれ。樱庭先生にも一言言っておいてくれ」