江口晗奈は長い間考えていたが、誰がこんなことをするのか思い当たらなかった。
「鈴木最上に精神病院に行って確認させたところ、あなたと樱庭家の者が会った日に、見知らぬ人が岸許豊令の病室に入るのを見た人がいるそうです」と賀川礼は言った。
「誰ですか?」
「監視カメラが壊れていた」
「……」
江口晗奈は頭が痛くなった。
問題は岸許豊令が今や狂人だということだ。
彼は人を殺し、傷つけ……
精神鑑定書があれば、制裁を逃れるのは簡単だ。
彼が見つからない限り、まるで全員の頭上に刃物が吊るされているようなものだ。
江口晗奈は賀川家を去る前に、賀川洵を見て「叔父さん、叔母さんとの進展はどう?」と聞いた。
賀川洵は困ったように溜息をついた。
なぜ彼に会う人みんなが、同じことを聞くのだろう。