340 素手で刃を受け止め、義理の叔父が盛山若社長を吹き飛ばす?(2話目)

木村海だけでなく、周りの人々も止めようとしたが、岸許豊令の様子は明らかに正常ではなく、皆は心配しながらも、軽々しく動けなかった。

公園の警備員たちが到着し、大声で叱責した:

「すぐにその刃物を下ろして、観念しろ!」

岸許豊令は耳を貸さなかった。

「警察には通報済みだ。すぐに来る。話し合おう。これ以上の愚かな行動は止めろ。」

警備員は彼を落ち着かせようとした。

しかし、そんな言葉は精神病院で散々聞かされていた。

捕まれば、刑務所に入らなくても、また連れ戻され、苦しめられる。

死んでも、

もう地獄には戻らない。

そして自分が死ぬ前に、

誰かを道連れにしなければならない。

彼が選んだのは、鐘见寧だった。

いや、今は盛山文音だ。

全ては彼女が現れてから変わった。彼には外に家族がいて、多くの人が知っていた。自分の娘の江口晗奈でさえ、黙認していた。

しかし、あの生意気な女が現れてから、全てが変わった。

彼は視線を移し、群衆の外にいる盛山文音を険しい目つきで睨みつけた。

美しく、華やかで、

盛山家お嬢様として、誰もが羨む存在。一方、自分は精神病院で惨めに生きることを強いられ、死にたくても死ねない。そんな豚や犬以下の生活は、もう二度と送りたくない。

刃物を取り出した瞬間から、逃げ場はなかった。

彼女が死んだら……

賀川家も岸許家も永遠に安らぐことはないだろう。

彼女を死に追いやったのは奴らだ。自分は関係ない。

岸許豊令は、冷酷な甥が悲しみに暮れる姿を想像し、思わず大声で笑い出した。警備員が隙を見て刃物を奪おうと近づいたが、彼は精神病院で医療スタッフとの駆け引きに長けており、簡単には近づかせなかった。

数回の試みの末、一人の警備員が手を切られた。

彼は刃物を振り回し、

さらに、一人の警備員を捕まえ、刃を首に突きつけた。長期の向精神薬服用で手が激しく震え、警備員の首の皮膚を切り裂き、血が流れ出した。

周囲からまた悲鳴が上がった。

「岸許豊令だな。お前は礼の叔父さんか。」湯川俊夫は彼を見つめながら、数歩近づいた。

「叔父さん!」盛山文音は眉をひそめた。

湯川俊夫は彼女に微笑みかけ、安心するよう合図した。

「お前は……」岸許豊令は眉をひそめ、「これ以上近づくな。もう一歩でも近づけば、こいつを殺すぞ。」

「ならやってみろ。」