345 恋敵が来た、他人の不幸を喜ぶ

一瞬のうちに、全員の視線が賀川洵に集中し、菅野望月は顔を少し伏せ、心臓が不意に激しく鼓動していた……

彼はただ微笑むだけで、認めることも否定することもなかった。

そのとき、ちょうど看護師がノックして入ってきて、菅野望月に点滴を打ちに来て、話題が変わった。

「……寒いわね、手の甲に点滴するのも冷たいでしょう」とおばあさんが眉をひそめた。

「大丈夫です、室内は暖房が効いているので、冷たくありません」

菅野望月は賀川洵の先ほどの言葉に驚いて汗が出て、全身が熱くなっていた。

盛山文音の携帯が振動し、藤崎芮伊からの電話だった。店に何かあったようで、外に出て電話に出てみると、昨日の出来事について知りたがっている記者たちが店に押しかけているとのことだった。

「お客様の迷惑になったり、営業に支障が出るようなら、すぐに警察に通報してください」

電話を切ったところで、いつの間にか兄が後ろに立っているのに気付き、彼女は笑顔で「お兄さん」と呼んだ。

「後で病院を出たら、一度家に帰りなさい。祖父母も両親もとても心配しているから」

盛山文音は頷いた。

「賀川洵って、本当に無神経な奴だと思わないか」

盛山文音は驚いて「お兄さん、どうしてそう思うの?」

「昨日あんな大変なことがあって、叔父さんと月ちゃんが怪我をして、お前も危うく刺されそうになった。考えれば考えるほど怖くなって、昨夜はほとんど眠れなかったのに、あいつは病院を出た後に女の子を追いかけに行くような余裕があるのか?」

「それは……」

「あいつの態度を見ろよ。笑ってはいないけど、なんだか殴りたくなるような顔をしている」

盛山文音は苦笑いを浮かべた。

まずい、

誤解が大きくなってしまった。

「あいつ、俺の前で得意げな顔をしているように見える」

「お兄さん、考えすぎじゃない?」

「そういえば、誰を追いかけているんだ?知ってるか?」

盛山文音は首を振って、「叔父さんとそれほど親しくないし、それに毎日旧邸にいるわけでもないから」

「そうだな、賀川洵のあの性格じゃ、お前にそんなこと話すわけないか」

兄妹が病室に戻ると、中には6人の人が増えていた。男女混じっていて、年齢もまちまちだった。盛山庭川は彼らを見回して眉をひそめると、菅野望月は急いで「師匠兄、この方たちは私と同じ事務所の同僚です」と紹介した。