426 扇動と策略、血を流さずに人を殺す(2話)

松本雨音はまだ彼を煽り続けていた。

「羽沢叔母は大局を見据えた人だから、今日の件で拘留されるのは確実です。妹は病院で看病が必要だし、まずは妹との絶縁の話は言わないで、離婚は金子家に対応するためだと言えば、金子家は妹を受け入れないわけにはいかないでしょう」

「妹と松本家の将来のために、形だけの離婚なんです。きっと同意してくれるはずです」

「それに羽沢叔母の今夜の件は、帝都中が知ることになりました」

「もし何もしなければ、来年の正月をどこで過ごすことになるか分かりませんよ」

そうだ、

一度破産すれば、今の豪邸も失うことになる。

松本和彦はもともと冷静な判断力があったが、盛山文音の妊娠の件で頭が真っ白になっていた。

その子が生まれれば、賀川様の最初のひ孫となる。

賀川様は既に表舞台から退いているとはいえ、その伝説は数多く残っている。