430 触れ合い、気になる、好きなの?

夜になり、帝都は今年の初雪を迎えた。

盛山庭川が隣を見ると、深夜になっても松本雨音は眠る気配もなく、書類の入った封筒を開けては何度も見つめていた。

「松本さん、ご安心ください。この書類の全ての条項は弁護士たちが何度も検討を重ねたものです。今夜は都内全域で最高の弁護士たちがあなたのために働いています。問題はありません」と山下助手は笑顔で言った。

彼は当初、松本雨音と松本家は関係を断絶する程度だと思っていた。

まさか彼女が松本家の全財産を狙っているとは思いもよらなかった。

「盛山若社長には芝居に付き合っていただき、感謝しています」松本雨音は盛山庭川に向かってお礼を言った。

彼女は雪に濡れていたが、払い落とさなかった。車内の暖気で服と髪の間で溶けて水になっていた。

盛山庭川は微笑むだけで、ティッシュを渡した。「雪解け水が付いていますよ」