428 犬が犬を噛む、完全に崩壊する（4）

松本和彦は息を呑み、信じられない表情を浮かべた。「この件をどうして知っているんだ？」

「やっぱり私を騙していたのね。他に隠し事はないって言ったくせに！」羽沢彩乃は苦痛と絶望に満ちた表情を浮かべた。

「彩乃、あれは咲良が触れてはいけない人を怒らせたから……」

「彼女はとっくに怒らせていたじゃない。婚約パーティーの件だって今日初めてじゃないでしょう。その時になぜ関係を絶たなかったの？今になってこんなことを。」

「それは……」松本和彦は頭が割れそうな痛みを感じた。

盛山家が事情を知り、必ず行動を起こすはずだ。

盛山文音も妊娠が判明し、

多くの事が重なり、こうするしかなかった。

彼は言えなかった。廊下には多くの人がいて、松本和彦は盛山文音を巻き込むわけにはいかず、言葉は喉元まで出かかったが飲み込んでしまった。

「なぜ言えないの？」羽沢彩乃は今や正気を失っていた。

人生の大半を費やした策略が、このような結末を迎えることに、彼女は驚きと怒りを感じていた。

「松本和彦、あなたが私と娘を幸せにさせないなら、私もあなたを許さないわ！」

「今日、みんなにあなたの本性を見せてやる。」

「警察官、私が先ほど作成した供述調書は全て嘘です。」

警察官は眉をひそめた。「羽沢さん、あの供述調書にはあなたが署名していますよ。責任を取ることになりますよ。」

松本和彦は瞳孔が開き、彼女が何をしようとしているのかを瞬時に理解し、仲裁に入ろうとする警察官を振り切って彼女に向かって突進し、口を塞ごうとした。羽沢彩乃が彼を避けた時、視界の端に近くにいる松本雨音の姿を捉えた。

彼女はすぐさま叫んだ：

「松本雨音、言っておくわ。今夜のお見合いは罠よ！」

「あの睡眠薬はあなたのために用意されたものなの！」

「松本和彦、あなたの実の父親が、あなたに薬を飲ませて、年上の男の寝床に送り込もうとしていたのよ。ハハハ……驚いた？意外？彼の心の中で、あなたは金を稼ぐ道具に過ぎないのよ。」

「全ては彼が計画したこと。彼こそが首謀者なのよ！」

次の瞬間、

松本和彦は彼女の肩を掴み、二発の強烈な平手打ちを加えた。彼女の口角が裂け、血が止まらなかった。

一度壊れた鏡は元には戻らない。