会員制クラブの個室にて
食事が終わり、みんながカードゲームをしていた。松本雨音はあまり上手くなかったが、盛山文音に引っ張られて、一つの席に座らされた。
みんなは最初、彼女が「できない」と言うのは単なる謙遜だと思っていたが、本当にできないことが分かった。そのため、彼女はよく定石から外れたプレイをし、他の三人を困らせていた。
秋月策人は仕方なく席を譲り、椅子を引いて、松本雨音の隣に座って指導することにした。
「……花屋は旧正月二日から営業するなら、お正月期間中は親戚回りする時間がないじゃない?」と盛山文音が何気なく尋ねた。
松本雨音は微笑んで、「もともとあまり親戚がいないんです」と答えた。
「親戚がいないわけないでしょう?」秋月策人が相槌を打った。
「当時、母が癌になった時、父は治療費を出そうとせず、私たちは借金をするしかありませんでした。母子家庭で返済能力がないことと、父の圧力もあって、誰も貸してくれませんでした」