467 濡れた体、誘惑、心が乱れる(2更)

土に触れる作業は決して清潔とは言えないため、盛山庭川が温室を出る時には、服や靴に泥が付いて少し見苦しい姿になっていた。というのも、汚れる仕事や重労働は基本的に彼がやっていたからだ。

「おかしいかい?」盛山庭川は眉を上げて彼女を見た。

「まあまあ」松本雨音は初めてこのような盛山庭川の姿を見た。というのも、固定観念の中の盛山若社長といえば、宝石や玉石を扱う人物で、全身泥まみれというのは、確かにギャップがあった。

「庭川や、今日は本当にご苦労様。きっと汗もかいただろう。これからデートもあるんだろうから、早く風呂に入って着替えたほうがいいよ」

賀川様は自分の手入れの行き届いた菜園を見て、とても満足そうだった。

盛山庭川が客室で風呂に入っている間、盛山文音は賀川礼に服を探して持って行くように頼んだ。

すると賀川礼は服を取ると、すぐに松本雨音に渡して、「松本さん、申し訳ないが持って行ってもらえますか」と言った。

「私が?」松本雨音は眉をひそめた。

賀川礼は盛山文音にだけは優しい態度を見せ、それ以外の時は愛想もなく、霜を纏ったような様子で、松本雨音は彼に対して恐れを感じずにはいられなかった。

そして彼は表情も薄く、「他の用事があるので」と言った。

服を彼女の手に押し付けると、すぐに立ち去った。

松本雨音は仕方なく、服を抱えてドアをノックした。何度かノックしても返事がなく、まだ風呂に入っているのだろうと思い、服を置いて帰ろうと考えた。

そしてドアは施錠されておらず、回すとすぐに開いた。

彼女が入って服をベッドに置こうとした時、ふと枕元の写真が目に入った。

家族写真だった。

盛山家と賀川家の人々が揃っており、盛山文音が真ん中に囲まれていた。背景は賀川家のリビングで、おそらく大晦日に撮影したものだろう。

全員の顔に笑みが溢れており、普段は冷たい表情の賀川さんでさえ、自分の肩を抱きながら目元に笑みを浮かべていた。家族揃っての賑やかな様子に、彼女は羨ましさを感じずにはいられなかった。

母が亡くなってから、年末年始でさえ、たくさんの料理が並んでも彼女と祖母の二人きりで、とても寂しかった。

「礼、服持ってきたか?」浴室から水音が止み、盛山庭川の声が聞こえた。「渡してくれ」

話しながら、浴室のドアが少し開いた。

白い湯気がドアの隙間から漏れ出てきた。