今日は名士や権力者が多く集まっており、誰も一介のボディーガードなど気にも留めなかった。
賀川凌介もその時彼らを見かけ、軽く頷いて挨拶を交わした程度だった。
「あいつ、どうかしてるんじゃないの?暇なの?社長として事務所でお茶飲んでスマホいじってればいいのに、ボディーガードなんて疲れるだけじゃん。何考えてるんだろう」賀川野は眉をひそめた。
賀川礼はいつもの無表情で弟を見て、「お前が黙ってれば、凌介がボディーガードをしていることなど誰にもわからない」と言った。
賀川野は軽く鼻を鳴らしながら、スマートフォンを取り出して数枚写真を撮った。
周りの人々は彼が女優を撮影していると思い、特に気にも留めなかった。
すぐに盛山家の者たちが到着した。
珍しいことに、昏睡状態の盛山庭川を除いて全員が来ていた。湯川俊夫は冷たい表情で、誰も声をかける勇気がないほどだった。