盛山文音は賀川礼の言葉に驚いたが、深く考える暇もなかった。というのも、その時舞台では玉翠堂の社員が【倾心】というネックレスを紹介していたからだ。
「このネックレスは、デザイナーが町田社長の奥様のために特別にデザインしたものです」
「このネックレスのダイヤモンドのように、二人の愛が風雪に耐えながらも輝き続け、初めての愛のままで百年を共に歩まれることを願っています」
……
話している間に、町田克純はネックレスを取り出し、盛山漱花の首に掛けた。
盛山漱花は以前、婿養子である町田克純を見下していた。婿養子は軽く見られがちだったからだ。
彼を臆病で無能だと思い、以前の親族会でも自分を裏切ったと感じていた。しかし、この期間の付き合いで、彼を唯一の頼りとするようになっていた。