「盛、盛山若社長、近すぎます」松本雨音は胸が高鳴っていた
息ができないかのように。
手を伸ばして彼を押しのけようとしたが、指が彼の胸に触れた瞬間、彼に掴まれてしまった。「あの夜、君はそんな風に呼ばなかったよね」
「盛山兄」松本雨音は早く逃げ出したくて、自然と従った。
「それで、君はどんなタイプが好きなの?」
「私は...」
「よく考えて答えて」
彼の視線は真っ直ぐで熱を帯びており、彼女を見つめていた。穏やかな瞳の奥には、激しい潮流が渦巻いているようだった。
松本雨音は適当にごまかそうと思ったが、彼の視線に動揺して、うまく言葉が出てこず、歯を食いしばって尋ねた。「私がどんなタイプが好きかって、あなたに関係あるの?」
どうせ、彼は自分のことを好きじゃないのだから。
その言葉に盛山庭川は胸が苦しくなった。
賀川洵の言う通り、彼は強がりを言う頑固者だった。
彼が気持ちを明かさないのも、恐れがあったからだ。松本雨音の心を読み取れず、拒絶されることを恐れていた。彼女は最近クズな婚約者を振ったばかりで、松本家の問題もまだ片付いておらず、祖母の世話も必要で、新しい恋愛を始める余裕がないかもしれないと心配だった。
恋愛の前では、いつも恐れを知らなかった彼も、少し臆病になっているようだった。
ただ、彼女を見つめる人が確かに多くて...
危機感が湧いてきた。
そして今日の突発的な出来事で、彼は突然気付いた:
自分は松本雨音が少しでも傷つくことも、自分から離れていくことも、全く受け入れられないのだと。
特に今の松本雨音のこの一言が、彼の琴線に触れたようだった。
いつもの理性と自制が、一瞬にして、
崩れ去った!
松本雨音の手は今、彼に押さえられて彼の胸に密着していた。彼女は慌てて手を引こうとしたが、彼は別の腕を上げ、長い腕を伸ばして、軽々と彼女を抱き寄せた。
次の瞬間、
彼女は彼の胸に倒れ込み、心が乱れた。顔を上げて何をするのかと聞こうとして、「盛山...」
その「兄」という言葉は口から出る前に、二人の唇の間に埋もれてしまった。
唇の距離が消えた。
周りの空気が一瞬で抜け出したかのようだった。
薄くなって窒息しそうなほど。
松本雨音の頭の中で雷が炸裂したかのように真っ白になり、唇の熱さだけが、どんどん熱くなっていくのを感じた。