環境が変わって、秋月策人は眠れず、賀川野とゲームをして夜中まで過ごした。二時間以上奮闘したが、ゲームに負けて、二人の初心者は互いに責め合った。
「お前のせいだろう。認めないなんて。もう二度とお前とゲームするなら、俺は犬だ!」賀川野は強く言い放った。
秋月策人も負けじと、「もう二度とお前を誘ったら、俺も犬だ!」
夜更かしをしたため、当然遅く起きた。携帯の目覚ましが鳴った時、彼は朦朧としながらアラームを止め、目も開けずに手探りで起き上がろうとした。しかし、ここが自分の家ではないことを忘れていた……
キッチンにいた栄田锦は、突然の鈍い音と、その後の秋月策人の息を呑む声を聞いた。
眉をひそめながら、客室のドアまで行き、「策人さん?大丈夫ですか?」
「足が...足が折れた。」
「え?」
たった一晩寝ただけなのに、どうして足を折ってしまったのか。
栄田锦がドアを開けると、ベッドサイドテーブルに膝を強く打ち付けてしまい、歩くのも困難な状態だと分かった。「本当に三十歳で、三歳じゃないんですか?」
「ちょっと来てくれない?」
「ん?」栄田锦は怪訝そうに近づいた。すると突然、秋月策人が手を伸ばし、彼の肩に腕を回した。その行動に栄田锦の体は少し硬くなった。「何をするんですか?」
「支えてくれないか。本当に痛くて、歩けないんだ。」
栄田锦は何も言わず、彼をリビングまで支えた。
秋月策人は栄田锦の肩に手を置いて初めて気づいた。栄田家の若坊ちゃんは、体つきがとても小柄で、背中が薄く、肩さえも風に揺られそうなほど華奢だった。
近くにいることで、彼の体から漂う香りがはっきりと分かった。
義姉の盛山文音は香を作る仕事をしていて、彼女のビジネスを支援するため、秋月策人は様々な線香を買っていた。香りにも詳しい方だった。蘭の香り?
男なのに、花の香りを焚いているのか?それとも香水をつけているのか?
無意識に近づいて匂いを嗅ごうとした。あまりにも近すぎたのか、軽く熱い息が当たり、栄田锦の体は完全に硬直し、反射的に彼を押しのけた。膝を痛めていた秋月策人はバランスを崩し、転びそうになった!
秋月策人は本能的に栄田锦を掴んで体勢を立て直そうとしたが、結果……
二人揃ってカーペットの上に転んでしまった!