秋月策人は彼の顔を見つめ、心の中で葛藤していた。
試してみるべきか?
それとも、やめておくべきか?
もし栄田锦が突然目を覚ましたらどうしよう?自分にキスされているところを見たら、変態だと思われるのではないか。男に対してこんな気持ちを抱くなんて。
秋月策人は自分が異常なのではないかと感じていた。
実は以前は栄田锦のような人を軽蔑していた。細い腕と脚で、女性よりも美しい顔立ちで、私生活は乱れ、女性との付き合いも絶えない。そんな人とは関わりたくなかったのに、なぜか一週間以上も一緒に暮らすことになってしまった。
どんな異常な感情であれ、男性に対してこれほど気にかかるべきではないはずだ。
もういい、
試してみよう!
彼は声を押し殺して、小さく二回呼んでみた。「栄田锦」
彼は深く眠っているようで、反応がなかった。秋月策人はおそるおそる手を伸ばし、顔にかかった髪をかき上げた。髪は想像以上に柔らかく細かく、短いため、横にかき上げても落ちてきてしまう……
かろうじて耳にかけることができた程度だ。
秋月策人は近づいてよく観察してみると、気づいた。
彼は……
ピアスホールがあるじゃないか!
最近では、男性がピアスホールを開けてピアスをつけることは珍しくないが、栄田锦のような冷静で自制心のある人がピアスホールを開けているとは意外だった。
小さな耳たぶに触れてみると、
柔らかく、温かい。
視線は彼の唇に移った。外では春風が激しく吹き、木々の葉が揺れる音を立てていた。深夜の静けさの中で、小さな音も無限に増幅されているようだった。あの夜、首に彼の唇が触れた感覚が蘇ってきた……
瞳の色が暗くなり、
喉元に言い表せないような飢えと焦りが湧き上がり、乾いて熱く、喉仏が小さく動いた。
キスしよう、
軽く触れるだけ、この異様な感覚が本当に存在するのか確かめるために。
秋月策人はこんなことをしたことがなく、心臓が喉元まで上がってきそうだった。近づくと、耳には心臓の鼓動しか聞こえなかった。唇を固く結び、思わず息を止めて、身を屈めた……
彼の頬に。
軽く触れた。
触れたかと思えば離れた。
彼の頬は温かく柔らかく、触れた瞬間、全身の血液が沸き立った。おそらく風呂上がりのせいで、普段より体が熱く、喉は火のように熱く、手のひらにも熱い汗が滲んだ。