秋月策人外伝(14)決別、もう会わないで

花見客が多い中、秋月策人と栄田锦はすでに人混みから離れ、一本の羊腸の小道を通って人気のない場所へと向かっていた。この場所は開発されておらず、地面には枯れ枝や枯れ葉が散乱し、荒れ果てていた。

ただ一本の桜の木があり、華やかに咲き誇っていた。

桜並木から離れ、孤高で気品のある様子を見せていた。

この場所は開発されておらず、人の足跡もほとんど見当たらない。当然道もなく、枯れ葉や枯れ枝が地面一面に広がっており、栄田锦は足を踏み外して小さな穴に落ちそうになった。

彼女が体勢を崩した瞬間、秋月策人は素早く彼女の腕を掴んだ。

「気をつけて」と彼は低い声で注意を促した。

「ありがとう」

しかし今回、栄田锦はいつものように彼の手を振り払うことはなかった。

秋月策人は内心喜んでいた。

もともと花見を口実に彼女と二人きりになりたいと思っていたが、適当な機会が見つからずにいた。まさか栄田锦が自ら人気のない場所へ連れて行ってくれるとは。

左右を見回すと、誰もいない!

よし、

悪戯するにはちょうどいい。

彼は息を潜め、彼女の腕を掴んでいた手をゆっくりと下へ...

手首まで移動させ、さらに少し下へ、

そして簡単に彼女の手を掴んだ。

彼女の手は細くて冷たかったが、秋月策人の手は彼自身のように、大きくて温かく、掌は熱く燃えるようだった。

彼女の手を掴み、しっかりと包み込んだ。

栄田锦は彼の体温が掌を通してじわじわと染み込み、心まで届くのを感じることができた。

でも彼の手のひらは、

熱すぎた。

まるで彼という人物のように、情熱的で激しく、彼女の手のひらまで汗ばむほどだった。

彼は彼女が逃げ出すのを恐れるかのように、強く握りしめていた。

それが原因で、彼女の心臓は理由もなく激しく鼓動し始めた。

秋月策人のすべては、堂々と太陽の下に晒せるものだった。しかし彼女はそうではない。名前も、性別も...すべてが偽りだった。

彼らは、そもそも異なる世界の人間だった。

秋月策人は喜びに浸っていた。栄田锦がついに自分を拒絶せず、手を繋ぐことさえ許してくれたのだから。

これは万里の長征で、ついに大きな一歩を踏み出せたということだろうか?

そうこうしているうちに、二人は桜の木の下に到着していた。