秋月策人番外（16）間違い、彼女を愛して欲しい

彼の感情は一瞬で激しくなった。

「従兄の死について、姉は心の中でずっと罪悪感を抱いていました。彼女は自分が従兄が担うべき責任を引き受け、家族の世話をし、会社を継ぐべきだと思っていたのです。実は…」

「彼女は以前、バイオリンを学んでいて、歌も上手でした。」

「でもあの後、彼女は二度と楽器に触れなくなりました。なぜなら…」栄田易真は苦笑いを浮かべた。「従兄は音痴だったからです！」

「私たちの家族は一種の暗黙の了解を形成し、大婆様のために、この間違いを続けさせ、発展させてきたのです。」

「でも彼女は決して栄田锦ではないのです！」

「彼女は機械ではありません。彼女には自分の名前があり、自分の喜怒哀楽や趣味があるのです…」

「彼女は他の女の子たちと同じように、好きな髪型をし、きれいな服を着て、好きな人になり、好きな人と付き合うべきなのに、一生栄田锦でいるべきではないのです！」

「従兄は死んだのだから、彼を過去にしておけばいいじゃないですか？」

「彼は20年以上も前に死んだのに、大婆様が死なない限り、姉は永遠に自由になれないのでしょうか？」

この言葉は、年長者の耳には、大婆様の死を願っているように聞こえ、大それた不敬な発言だった。

栄田易真が殴られたのも無理はない！

「彼女は20年以上も閉じ込められてきたのに、自分の幸せを追求することもできないのですか？私がこんなことを言って何が悪いのですか？」栄田易真は話しながら、すでに涙でいっぱいの顔をしていた。

「こんなはずじゃなかった、間違っている、すべて間違っているんだ…」

「彼女は栄田锦じゃない、一度もそうじゃなかったんだ！」

秋月策人は黙っていた。

彼が調べた戸籍情報には、確かに栄田锦という人物が存在し、今でも抹消されていなかったが、生年月日は現在の「栄田锦」と一致していなかった…

そして栄田家のお嬢様は、今まで誰も見たことがなかった。

秋月策人は馬鹿ではなく、ある程度推測できた。

ただ、当時噂されていた誘拐事件が本当だったとは思わなかった。

おそらく未成年が関わっていたため、情報は水も漏らさぬように隠されていたのだろう。

栄田易真は突然秋月策人の腕をつかんだ。「兄さん、あなたは姉を好きでしょう、ずっと好きでいてくれますよね？」

「お願いです…」