実家

時枝秋は部屋に戻り、マスクを外し、顔のメイクを落とした。

上半分の精緻で艶やかな顔には、一点の瑕疵もなかった。

鼻翼から下の部分には、歪んだ傷跡が横たわり、唇を横切って顎まで達していた。

既に痂皮となった傷跡は歪んで恐ろしく、まるで悪戯の墨絵のように、精緻で完璧な絵画を台無しにし、時枝秋の顔に消えることのない痕跡を刻んでいた。

これは全て時枝家の本物のお嬢様のせいだった。

時枝家の本物のお嬢様は、元の名を尾張雪穂といい、時枝家に引き取られた後、すぐに時枝雪穂と改名された。

彼女は優雅な物腰と振る舞いで、時枝家の全ての人々の寵愛を素早く獲得した。まして彼女は時枝家の本当の血筋だった。

その時の時枝秋は、まだ十二歳だった。元々尾張家は彼女を引き取ると約束していた。彼女も全てを諦めて戻る覚悟だったが、尾張家は約束を破り、誰も迎えに来なかった。

時枝秋には選択の余地がなく、時枝家に留まるしかなく、時枝家の笑い者となった。

皆は彼女を嘲笑い、貧しい尾張家が意図的に迎えに来なかったのは、彼女が裕福な時枝家で恩恵に預かり続け、貧しい生活に戻らなくて済むようにするためだと言った。

さらに悪意のある推測をする者もいて、当初から尾張家が意図的に時枝秋を裕福な家庭に送り込んだのは、実の娘を貧しい環境から救い出し、良い暮らしをさせるためだったと言った。

偽物のお嬢様の日々は、想像以上に辛いものだった。

時枝雪穂は表面上は彼女に気を配っていたが、陰では常に陥れたり、困らせたりしていた。

この傷跡は彼女の手によって付けられたものだった。

時枝秋は時枝家で何とか生活を送り、名目上の婚約者である小林凌だけが、彼女の暗闇の中の一筋の光だった。彼女は必死に彼にしがみついていた。

後に尾張家は藤原修に時枝秋を迎えに行くよう頼んだが、時枝秋はもはや尾張家を信じることができなかった。

しかし何年も後になって彼女は知ることになった……尾張家が当時迎えに来なかったのは、確かに突然の出来事が原因だったということを。

尾張家は実は、小さな家柄などではなく……早京市の四大家族の一つで、彼らも藤原修と同じように、彼女を深く愛していた。

ただ前世では、不運な巡り合わせで、お互いにあまりにも多くのものを取り逃がしてしまった。

「大丈夫、今度は私があなたたちを守る番よ。」時枝秋は実の両親と兄の顔を思い浮かべながら、鏡に向かって小声で言った。

彼女は薬を取り出し、顔の傷跡に丁寧に塗り込んだ。

彼女は前世で偶然古い医術を習得し、薬を調合して、これらの傷跡を消すことができるようになった。

ただし、それには一定の時間が必要で、その間はメイクができない。治癒時間に影響が出てしまうからだ。

今日は婚姻届を出すために写真を撮る必要があったので、特別に大量のファンデーションを使って、傷跡を何とか隠していた。

彼女の顔のこの恐ろしい傷跡を見ても、最後まで変わらない気持ちを持ち続けられる人は、おそらく藤原修だけだろう。

時枝秋は口元に微笑みを浮かべた。

……

翌日、木村雨音は早朝から浅湾別荘にやって来た。

別荘の中は静かで、彼女が予想していた大騒ぎや混乱はなかった。

彼女は非常に困惑した。身分証明書を燃やしても藤原修の怒りを買うには足りないのだろうか?

それなら彼女が来て火に油を注ぐしかない!

「時枝秋!」木村雨音はようやく時枝秋を見つけた。

彼女はすでに外出用の服装に着替えていて、今日はシンプルな白いTシャツに色褪せたジーンズを着ていた。何気なく覗く腰は細く白く、手で掴めそうなほど華奢で、長い脚はまっすぐで細かった。

どんな服装でも時枝秋が着ると、いつも独特の美しさが示されていた。

木村雨音は思わず嫉妬で目が赤くなった。