第47章 今は無効になった

時枝秋が現れる前は、藤原修が女性を好きになるとは誰も思っていなかった。木村裕貴でさえも。

もちろん、彼のような性格では、男性を好きになることもあり得なかった。

そして今…藤原修は非常に独占的な態度と姿勢で、目に見えない威圧感で時枝秋を自分の領域内に囲い込み、木村裕貴は時枝秋への視線を引き下げざるを得なかった。

時枝秋は小声で藤原修と話し、その瞳には輝く星のような光があった。

木村裕貴は鼻を鳴らし、心の中で祈った。藤原様が今夜、彼女のすべての条件を受け入れてくれることを。

浅湾別荘に着くと、木村裕貴は藤原修と時枝秋と一緒に車を降り、彼らと共に中に入った。

ホールに入ると、普段から鋭い藤原修はようやく木村裕貴が付いてきたことに気付いた。

「用件は?」藤原修が尋ねた。

木村裕貴はため息をつき、持参していた契約解除合意書を取り出した。「藤原様、時枝さんとの契約解除に同意します。」

時枝秋はソファに座り、大島執事が持ってきたジュースを受け取って二口飲み、気持ち良さそうにため息をついた。

「何の契約解除だ?誰が去るというんだ?」男の目に危険な光が走り、野獣のように警戒して細めた。

非常に重苦しい雰囲気が、別荘全体を包み込んだ。

木村裕貴は首を出すも一刀、引っ込めるも一刀と知りながら、口を開いた。「先日、時枝さんから契約解除合意書が送られてきまして、セガエンターテインメントとの契約を解除し、今後一切の関係を断ちたいとのことでした。私も考えて、説得もしましたが…時枝さんは心を動かされず、すでにゴールデンエンタメと何度も密かに接触を重ねているようです。」

木村裕貴は、妥協して時枝秋に留まるよう丁寧にお願いすることも考えなかったわけではない。

しかし、時枝秋がすでにゴールデンエンタメの岡元経理と何度も接触を持っていることを知り、無理強いしても良い結果は得られないと悟り、むしろ藤原修に事実を話した方がいいと判断した。

三人で直接契約を解除し、その後は時枝秋の好きにさせればいい。

彼の言葉が落ちると、予想通りの藤原修の狂気じみた威圧感が現れ、目に見えない圧力が人を息苦しくさせた。

藤原修はその場に立ったまま、何の動きも見せなかった。