第48章 私はあなたの好意に値しない

木村裕貴は意外そうな表情を浮かべた。「本当ですか?」

「調べればすぐに分かりますよ」と時枝秋は確信を持って言った。

木村裕貴は一瞬考え込んだ。確かにこの件は自分の見落としだった。本来ならこのような失態は許されないはずだが、ただ時枝秋のことを放っておいただけだった。

しばらく考えてから言った。「それでも、もう協力関係を続ける必要はないと思います。契約は解除しなくても構いませんが、もう私はあなたを担当したくありません。藤原様、どうか他の者をお探しください」

彼は時枝秋のためにキャリアプランを立て、リソースを手配し、忍耐強く指導してきた。

しかし...泥を壁に塗っても固まらないように、曲がった木を一瞬で真っ直ぐにすることはできない。

藤原修の怒りは、契約解除を拒否する時枝秋によって完全に消え去った。

契約解除しない=去らない。

去らないということは、彼女が安心して彼の側にいられるということ。

「時枝の意見を聞こう」彼は落ち着いた様子で時枝秋を見つめ、彼女の意見を求めた。

「私は木村さんが好きです」時枝秋が言い終わるや否や、藤原修の表情が変わった。彼女は慌てて付け加えた。「つまり、木村さんとの仕事が好きだということです。協力関係を解消するのは嫌です」

今度は木村裕貴の顔色が変わった。

自分のキャリア、将来が、この何の取り柄もない女に縛られることになるのか?

声が掠れながら言った。「時枝さん、私はあなたの好意に値しません」

「そんなに自分を卑下しないでください、木村さん。あなたは凄いマネージャーです」

木村裕貴:「……」

時枝秋は彼が有能で、タレントの本当の才能を見抜いて育てることのできるマネージャーだと知っていた。

話題作りを好まず、全ては作品で語らせる。枕営業も大嫌いで、決して自分のタレントに酒席や枕営業を強要しない。

前世では時枝秋と別れた後、さらなる高みへと上り詰めた。

時枝秋は彼との協力関係を手放したくなかった。

「木村さん、もうお互いのことはよく分かっているんですから、このままでいきましょう」

木村裕貴は躊躇いながら言った。「時枝さんはもうすぐ『國民シンガーソングライター』の番組が終わりますし、もう私は必要ないでしょう」

「誰が私がもうすぐ終わるって言いました?」時枝秋は彼を見つめて尋ねた。