「雨粒ちゃん!」
木村裕貴は驚いた。木村雨音はこれまで創作能力も歌唱力も優れていたのに、なぜ最下位圏なのか?
そうなると時枝秋は最下位中の最下位ということになるのではないか?
「脱落圏にはもう一人...帆足!」
帆足とは田中航のことだ。
田中航は木村雨音に足を引っ張られ、後半は完全に崩れてしまった。この順位は、まさに実力通りと言えるだろう。
木村裕貴は時枝秋を一瞥した。
「第一位は、相変わらず歌唱力も作詞作曲力も抜群で、大会開始以来ずっとトップを走り続けているローズちゃんです!」
「旗ちゃんが第二位です!」
文岩薫里と重岡亜紀は自分たちの成績を維持した。
時枝秋の順位発表までカウントダウンが始まった。
番組スタッフも時枝秋が今最も話題の参加者であることを知っていたので、なかなか彼女の順位を発表しなかった。
司会者は彼女の順位を見て、まず息を飲み、それから言った:「信じられません、石ちゃんがこんな成績を収めるなんて!」
「彼女は...第三位です!」
コメント欄では、小林凌のファンたちが怒り心頭だった:「ありえない!」
「やらせだ!」
「番組側は兄さんの血を吸うのをやめてください!」
「こんな奴が相応しいわけない?」
しかし、大量のアンチコメントの中にも、公平な意見はあった:「石ちゃんの曲、確かにいい出来だよね!」
「もう3回も聴いたけど、歌唱力も素晴らしいよ!」
「お姉さん、一人で頑張って!男なしの方が輝けるよ!」
しかし、アンチが多すぎて、すぐにこれらの本当のファンの声は消されてしまった。
堀口楓が第五位を獲得したのを見て、時枝秋はようやくテレビの電源を切った。
横を向くと、木村裕貴が魂の抜けたような顔でテレビを見つめ、口を大きく開けたまま閉じられないでいるのが目に入った。
「木村さん、さっきの賭け、有効ですよね?」時枝秋は断定的な口調で言った。
木村裕貴は、セットされた大きなポンパドールの中にも、わずかな落胆の色が見えるほど衝撃を受けていた。
しかし、彼は信義を重んじる人間だった。先ほど大口を叩いた以上、約束は守らなければならない。
ただ、時枝秋と永遠に付き合っていかなければならないと思うと...胸が痛んだ。