「次は帆足の登場です!」司会者が発表した。
帆足の田中航は、木村雨音に足を引っ張られ、順位は木村雨音よりも低かった。
前回の結果に大きなショックを受けていた。
彼はステージに残りたい一心だった。
彼の指導者も小林凌で、小林凌は彼のために順位の低い選手を選んでいた。
彼はこのことをずっと気にしていた。誰を選んでも、脱落のリスクはあった。
しかし、時枝秋を選ぶなら——番組側は、一度選ばれた歌手を再び選ぶことを禁止していなかった——時枝秋は既に一回の挑戦を経て、体力も精神力も消耗しており、まだ十分に回復していない。
そうすれば、自分の勝算は大きくなるはずだ!
「石ちゃんを選びます!」田中航は即座に答えた。
司会者は意外そうに:「本当によろしいですか?」
「ルール上問題ないでしょう?問題なければ確定です!」
会場がどよめいた。
ステージ近くに座っている観客たちは、時枝秋の先ほどのパフォーマンスに満足しており、彼女に好意的だった。
田中航のこの選択を聞いて、軽蔑の念を抱かずにはいられなかった。
木村裕貴は眉をひそめた。時枝秋の人柄の悪さは紛れもない事実だが、この男もあまりにも男らしくなさすぎる!
指導者たちも失望した様子で、首を振った。
しかし今、選手のこのような奇策によって、観客の大きな議論を引き起こした。
ソーシャルメディア時代では、すべての議論が最速の形で発酵し、幾何級数的に急速に広がっていく。
田中航が歌い始める頃には、視聴者数が激増し、コメントも画面を埋め尽くすほどになった。
「今となっては、帆足と石ちゃん、どちらがより騒動を起こしているのか分からないね。」
「本当に、どっちもどっちだよ!」
「やれやれ、両方とも傷つけばいいのに!」小林凌のファンは当然、騒ぎを楽しんでいたが、以前と比べると、実際に時枝秋を批判する人は大幅に減っていた。
人々は才能のある人を認める。時枝秋の数回のパフォーマンスは彼らの心を掴み、さらに小林凌の話題に便乗することもなくなったため、彼らも自然と落ち着いていった。
田中航の歌が終わり、前回の酷い出来と比べてずっと良くなっていた。
比較すると明らかで、安定感があった。
「夢ちゃんの『墜落』を選びます!」時枝秋が言った。
「彼女、本気?」皆が息を呑んだ。