第78章 切り落とす

「パチン」という音と共に、時枝秋は手際よく花を切った。

満開の三輪の白いヤオランが、ふわりと枝から落ちた。

花が地面に落ちそうになったとき、時枝秋は素早く三輪のヤオランを受け止めた。

「何をするんだ!」小林凌は驚きのあまり、時枝秋の意図が理解できなかった。

彼女は花をしっかりと握りしめ、困惑する小林凌に向かって言った。「私の花は、私が好きな男性に直接渡すと言ったはずよ。ごめんなさい、その人は、あなたじゃないの」

そう言い終えると、片手に花瓶を抱え、もう片手で三輪のヤオランを握りしめたまま、背を向けて立ち去った。

その場にいた全員が唖然とした。

まさか小林凌に贈るものではなかったとは?

それどころか、彼女はハサミで切り落としてしまったのか?

三億二百万円だぞ!

それを彼女は一刀両断にしてしまったのか?