第77章 応援

それもいい。

今夜のこの時間を利用して、藤原修の心にある全ての疑念の種を一掃させよう。

この数人の「中村愛子」たちに感謝だ。彼らは惜しみなく橋を架け、道を敷いてくれた。私は彼らを踏み台にして、自分の目標を順調に達成できる。

時枝秋がゆっくりと前に進むと、数人の記者がすでに敏感に立ち上がって尋ねた。「すみません、このヤオランを高額で落札されましたが、何か特別な理由があるのでしょうか?」

記者たちを前に、時枝秋はサングラスを外し、マスクだけを付けたまま、明るい口調で本来の声で答えた。「私の人生で最も大切な、いいえ、最も重要な男性のために落札しました。このヤオランは、私が直接彼の手に渡すつもりです。」

「その方は、あなたにとって本当に大切な人なのですね」記者が冗談めかして言った。

「そうですね。彼は私の命よりも...大切な存在です」時枝秋は何気なく藤原修の方向を見たが、意図的に彼の鋭い視線を避けた。

今回は、自分から説明はしない。彼自身に気づかせよう。

彼自身が自分の間違いを認めることほど、印象に残ることはないのだから。

この一件の後、彼の心にある全てのトゲを抜くことができ、二人の間でこのような問題で不和が生じることはもうないだろう。

時枝雪穂は息を呑んだ。時枝秋はまだ小林凌のことを想っているなんて!何の権利があって?!

小林凌は得意げな表情を浮かべた。やはり時枝秋は自分のことを忘れていない、あの歌の歌詞は彼女の八つ当たりに過ぎなかったのだと。

木村雨音は逆光の中に立つ男性を密かに観察した。彼は冷淡で疎遠な様子で、悪魔のように恐ろしく、放つオーラは非常に圧迫感があった。

全てが丁度良い具合に、誰もが望みを叶えられそうだった。

時枝秋はオークショニアの手から、厳かにヤオランを受け取った。

ある記者が、まるで今になって彼女の正体に気づいたかのように驚いて言った。「あの、もしかして『國民シンガーソングライター』の石ちゃんではありませんか?」

「はい、そうです」時枝秋は素直に認めた。

「では石ちゃん、先ほどおっしゃった大切な男性というのは...小林凌さんのことですか?」記者は更に誘導した。

時枝秋は小林凌を一瞥したが、その眼差しは冷淡だった。