「時枝秋?」二人とも少し信じられない様子だった。
時枝秋がこの蘭を買って何をするつもり?
すぐに、確信的な考えが二人の心に浮かんだ。「まさか小林凌のために競売に来たんじゃないでしょうね?」
木村雨音は時枝秋が確かにそのために来たと確信していた。結局、彼女と藤原修の関係がどれほど悪化していたか、この目撃者である自分が一番よく知っているのだから。
横澤蕾もそう思っていた。「小林凌、どう思う?時枝秋にそんな可能性はまだあるのかな?」
小林凌は時枝秋の冷たい瞳を思い出したが、それ以上に彼女が必死に自分に心変わりを懇願していた熱心な様子を思い出した。
彼は軽くうなずいた。
横澤蕾は彼の意図を理解した。
小林凌にはこの花を競り落とすお金がないわけではない。
ただ、時枝秋が競り落として、公の場で彼にプレゼントすれば、当然注目度は違ってくる。