小林凌は微笑みを浮かべたまま、時枝秋が歌い継げるとは思っていないようだった。
この夜、会場に残って観戦していた時枝雪穂は、姿勢を正したまま、密かに首を振った。「どうやら、時枝秋は去ることになりそうね。この葉山先生は、助けに来たのか邪魔をしに来たのか、分からないわ」
続いて、同じく衝撃的な歌声が響き渡った。「私は太陽神のように
永遠に消えない炎を見守り続けよう
私はプロメテウスのように
あなたの大切な理想を守るために」
この部分の歌い方は、葉山彩未とは異なっていた。
しかし唯一同じだったのは、同様の強い爆発力と、会場の支配力が依然として強烈で驚くべきものだったことだ。
歌を聴いていた人々は皆、彼女の声に引き寄せられ、舞台上の彼女に釘付けになっていた。
彼女が一節歌い終わると、皆はようやく気付いた。これは石ちゃんの声だったのだと!
つまり、二人の歌唱力は全く互角で、表現力もほぼ一致していたのだ。
この発見は、まだ会場に残っている観客たちにとって、大きな驚きだった。
彼らは誰のファンでもなく、ただ歌を聴くために存在していた。
しかし、本当に心から感動する歌を聴けば、投票アプリを開いて選手に一票を投じることも厭わない。
なぜなら彼らは一つの道理をよく知っていたからだ。「好きなものを見つけたとき、声を上げず、支持しなければ、これからあなたが見るものは、すべて他人の好きなものになってしまう」
皆が躊躇なく投票アプリを開いた。
時枝秋のファンたちは更に熱狂的な投票モードに入った。
彼らの数は最多ではないかもしれないが、時枝秋と共に歩んできた道のりで、既に運命共同体となっていた。
舞台上で、時枝秋と葉山彩未の声が一つになった。「他人がどう言おうと、私の実力は否定できない!」
紺野広幸が率先して拍手を送った。
会場の数百人のファンたちも、どちらのファンであろうと、この素晴らしいライブパフォーマンスに思わず拍手を送った。
時枝雪穂は軽く唇を噛みながら、流れに従って拍手を始めた。
ステージを降りた後。
葉山彩未は時枝秋を抱きしめた。「最高だったわ!こんなに思い切り歌えたのは久しぶり!まさに好敵手ね!」
「好敵手」という言葉は、時枝秋への最高の賛辞だった。
結果を待つ間、夏目休は時枝秋を見つめて言った。「本当にあなたが作ったの?」