試合は万衆の期待の中で始まった。
前回のトーナメント戦の話題性と、石ちゃんと蘭を切る動画の拡散により、『國民シンガーソングライター』は現在最も人気のオーディション番組となっていた。
視聴率は上昇を続け、週末の主要テレビ局のゴールデンタイム番組をも上回るほどだった。
「今回も、ネット投票で最も輝く出場者を選んでいただきます。応援したい方を、ぜひ残してください!」司会者の声とともに、番組が始まった。
時枝秋は後半の出場順に配置された。
一方、文岩薫里や重岡亜紀といった出場者たちは、番組のゴールデンタイム―中盤に配置された。
彼女たちとデュエットするサポートゲストは、現在非常に人気があり、多くのファンを持つアーティストで、最も注目を集められる存在だった。
サポートゲストたちもネット上で自身のファンに呼びかけ、共演する出場者への投票を促していた。
今回は、出場者の動員力だけでなく、サポートゲストの影響力も試されていた。
葉山彩未は長年表舞台から離れており、もはや固定のファン層は存在しなかった。
時枝秋のファン層は忠実だったが、その数は以前の彼女にとっては十分だったものの、他と比べるとやや弱かった。
時枝秋は最初から悪い手札を引いていた。
競技は少しずつ進んでいった。
ネット上の議論も次第に熱を帯びていった。
前半の出場者たちの演技は、それぞれ一長一短があった。
テレビやパソコンの前で待機している視聴者たちは、手元の投票権を持って、お気に入りの出場者に投票しようと待っていた。
投票は開演と同時に開始されていたため、出場順が後ろになればなるほど不利になる。それは残りの票数が既に大幅に減少していることを意味していた。
時枝秋のファンたちは待ち続けていた。
他の出場者のファンの多くは、推しの演技を見終わると、他のチャンネルに切り替えたり、スマートフォンで遊び始めたりしていた。
残った視聴者たちは、本当に音楽を愛し、才能ある歌手を心から応援する人々だった。人数は以前ほど多くなかったが、良い音楽への要求は、単なるファン以上に高かった。
時枝秋と葉山彩未が同時に登場した。
葉山彩未は黒い衣装に身を包み、十分な休息を取っていたため、とても充実した様子だった。
時枝秋は仮面をつけ、本来の容姿を隠していた。