第68章 お嬢様

「やらせてください!」藤原千華は秦野伸年を押しのけて、前に出た。

「千華」秦野伸年は低い声で制止し、手を伸ばして彼女を引き留めた。

「やらせてください」藤原千華は断固とした口調で、はっきりと言った。「赤司先生でしたよね、すぐに手術をお願いします」

秦野伸年は首を振った。「千華、今のあなたの状態では、少なくとも手を普通に使えているんだ。もし軽率に再手術をすれば、私は心配で…」

「怖くありません!今のままでも、私にとっては役立たずなんです。赤司先生に試してもらいましょう。最悪の結果になったとしても、これ以上悪くなりようがないでしょう?」

藤原千華はすでに決心を固めていた。

時枝秋:「すぐに準備してきます」

彼女は足早に出て行った。すでに石杜健と連絡を取っていたため、病院は彼女の手術申請を承認し、完全なアシスタントチームを配置していた。

出てきた時、石杜健はWeChatで尋ねていた:「お嬢ちゃん、うまくいってる?進展はどう?手術の動画を撮るのを忘れないでね、あなたの技術をしっかり見させてもらいたいよ!」

「お嬢ちゃん?いる?いる?」

「いる?お嬢ちゃん?」

「師叔祖、師叔祖、一言返事してくれませんか?」

時枝秋はとっくに携帯をしまい、素早く無菌着を着て、手袋をはめ、手術室に足を踏み入れた。

彼女が今回使う方法は、実は伝統的な中医の技術で、鍼灸を通じて藤原千華の経絡を通すことだった。

元々藤原千華の手術は実際とても成功していたのだが、最適な状態まで回復できないのは、まさに経絡に問題があったからだ。

現代医学技術はすでに世界を席巻し、伝統医術は度々疑問視されている。

しかしこれは伝統医術に問題があるのではなく、伝承に問題があるのだ。精髓を学んだ人が少ないため、当然伝統を発揚することができない。

伝統的な鍼灸を使用した後、経絡が通じ、藤原千華の手術のある部分を、やり直す必要があった。

しかし、やり直す部分はごく簡単な一部分だけで、時枝秋にとっては全く難しくなかった。

……

廊下で、秦野伸年と藤原修は無表情で待っていた。

秦野伸年は金縁の眼鏡に手をやり、その動作はまるで静止画のように、長い間動かなかった。

藤原修の長身は地面に暗い影を落とし、彼の眉間には思索の色が混じり、何かを考えているようだった。